「ボク、スパイじゃないんで!」
オナマルはそう言って、自分がなぜここに来たかについて話し始めた。
「ボク、幼い頃からずっと会社の後継になるように教育されてきたんす。ずっとAV業界についての知識を叩きこまれて、、、最初はボクもそのつもりでいたんす、、、けど、中学生の頃あたりからずっと、ボクはAVを作るために生まれてきたのか?って思うようになったんす。父上はAVを作ることを、人の夢の世界に誘う仕事だって、誇らしく語るんす。けど、ボクにとってはそれは共感できなくて、、、AVを作るっていうのは、人を現実から遠ざけることなんじゃないかって思うようになったんす。なんか、AVのせいで、人は本当に自分のしたいことができなくなっているんじゃないかって。AV見てオナニーしなければ本当の自分になれる人がたくさんいるんじゃないかな、、って。だからボク、家を飛び出してきました。家出っす。高校も辞めてきました。オナ禁学園の存在も知っていました。オナ禁学園が、実質タダで入れて、ボクみたいな家出者でも通えるのも知っていました。だから、ボクの考えていることが本当に正しいのか、この学園で見極めようと思ったんす。AV業界の世界とオナ禁の世界、どっちも経験して、自分の将来を決めようと思ったんす!」
それを聞いたモコみちは、なるほど、理由はすごく立派だ。こいつは大物になる。と思うのと反面、こいつを信用していいのか、とも思った。なぜなら、モコみちは以前、とあるAVメーカーが禁欲財団に多額の出資をしているという噂を聞いたからだ。なぜAVメーカーが?などと考えていたが、それがもしシコリエンターテインメントだったら、、、スパイをすんなり送り込むための出資だったのかもしれない、、、
そう考えいた。
モコみちが考えていると、オナマルはさらに続けた。
「というわけで、モコさん!ボクを生徒会に入れてください!」
モコみちは唐突すぎてびっくりした。
オナ禁学園の生徒会は、選挙で選ばれる生徒会室以外は完全に生徒会長の指名制だ。指名される資格は、全ての学年のA組のものに与えられる。オナマルも一応Aだ。だから生徒会には入れる。
だが、、疑念は晴れない。それに、オナマルは転校1日目だ。他の生徒だって反対するだろう。とりあえず断ろう。とモコみちは思った。
「悪いが、もう少しこの学園になれてから・・・」
そう言いかけると、
「少なくとも、ボク、あそこに寝ている人より仕事しますよ?」
と言って、ツバサの寝ているベッドを指差した。
ツバサの意識はあったようで、すぐさま起きた。
「ああ?お前、来たばっかりか?」
オナマルを見てそう言った。さらに
「オナマルっていうんだっけ?お前、本当に男か?小動物みたいな顔してんなぁ。」
オナマルと笑顔を崩さず、
「知らないんですか?今は可愛い方がモテるんですよ?」
と言った。
モコみちには、この2人の目線の間にわずかな稲妻が見えた気がした。
続く
亀太郎